年齢不詳診断士の丸目です。お蔭様で当社も創業7年目を迎えようとしています。この丸6年間、耐震診断を沢山させて頂きましたが、面白かった事、苦しかった事など、様々な思い出があります。又、お客様とはそれこそお家の事から家族の事まで色々なお話をさせていただきますので、どのお客様もとても思い出深くよく覚えています。
そこで今回は、その中からいくつか思い出話を少しさせていただこうと思います。
これは、以前診断させて頂いたお家での気の毒な思い出です。
耐震診断へお伺いしますと、御主人様がご一緒に屋根裏や床下の点検をされたいとおっしゃられる事がよくあります。
通常、屋根裏の点検の際には、2階の押入の中にある天袋から屋根裏へと入っていきます。洋室の天井というのは元々、多少強く作られており、少々上に乗っても大丈夫なのですが、和室の天井はそういう訳にはいきません。
その日もいつも通り、天袋から丸太梁を目指して狭い天井裏を入っていくと、後に続いて御主人様が一生懸命天井裏へと入ってこられました。
そこは和室上の天井でしたので、私が御主人様へ「決して天井板には体重をかけず、梁の上をレスキュー隊の様に腹ばいになって、ゆっくり進んできて下さい」と言った矢先、余りの狭さと暑さで御主人様がついうっかり天井板の上に足を載せてしまわれました。
すると案の定天井板は『バァーン』と大きな音とともに一部外れてしまいました。御主人様は「どうしよう・・」といって慌てておられましたので、私は「とにかく元の部屋へ戻って待っていてください」と言い、御主人様がもと来た入口から室内へと戻った瞬間。。。
そこの部屋に居られた奥様から「何してんのー!診断する前から修理しなあかん様になってしまったやんかー」と叱られている声が聞こえてきました。
私は、御主人様が気の毒でまさか笑う訳にもいかず、速やかに点検を終了し、天袋からお二人の居る部屋へと戻りました。すると奥様から、「この天井直すのにいくら掛かるん?」と聞かれましたので、少し申し訳ない気持ちになりながら、お値段をお伝えし、このお家の診断を終わりました。
次に、苦しかった思い出ですが、耐震診断では、屋根裏や床下などに入ります。夏場などは屋根裏へ上がると、屋根裏の温度は65℃位まで上がっています。お客様も心配して下さり、診断が終わるとよく冷たいお茶などを出していただいたりして、とてもありがたく思います。
これも、そんなとても暑かった日のお話です。
その日も、連日の猛暑続きで大変暑い中での診断でした。いつもと同じ段取りで、お家の外側の点検、お部屋の中からの点検が終わった後、いよいよ恐怖の屋根裏と床下の点検です。意を決して屋根裏に入り、汗だくになりながら何とか屋根裏の点検を終了し、今度は床下へ潜っていると、診断のお家へ来客があった気配を感じました。御主人様と奥様が玄関の所でそのお客様とお話をされているご様子でしたので、診断をなるべく早く終わらせてさし上げようと思い、自衛隊よりも早いほふく前進で床下を這っていたところ、余りの暑さと体力以上の動きにより、急激に足がつってきました。
あの日に床下で感じた喉の渇きと、足の痛みは今でも忘れる事のできない思い出になっています。
最後に、これは少し悲しい思い出ですが、中古のお家を購入された若いご夫婦から依頼があり、診断にお伺いした時のことです。
ご夫婦へ診断を受けようと思った経緯をお聞きしたところ、中古でご購入された後、お家を綺麗にリフォームされ、不動産屋さんにも強いお家になっていますと言われていたのですが、やはりそこは一度専門家にも診て欲しいとの思いから診断を申し込まれたとの事でした。
診断を進めていくと、リフォームの過程で、リビングやダイニングを一体化させ広い空間へ変える為に、大切な柱や壁を抜いてしまっている様に見受けられました。
診断が終了し、ご夫婦も結果を楽しみにしておられましたので、少しでも良い結果が出るといいのだけれどと思いながら診断書を作成し、計算してみるとやはり結果は余り良くないものとなりました。後日ご夫婦へ診断結果をお伝えした所、がっかりされたご様子で、耐震補強をすれば強くはなりますが、再度リフォームとなると費用の負担も掛かってきてしまいますし、とても悩んでおられました。
この様なお家の場合、私は特に残念に思います。出来る事なら購入前に、耐震診断を受けているお家かどうか、診断書があるかどうかなどを確認していただきたいと思います。お家は、家族の命や財産、大切な思い出を守る為にあります。皆さんどうかお家を大切にしていただきたいと思います。それでは、この辺で、白髪頭の丸目診断士の思い出話を終わりたいと思います。