各地で大規模な地震の発生が予想されている中、自宅の耐震性に不安をお持ちの方も多いことだと思います。それでは、地震に強い家というのはどのような家なのでしょうか?
住宅の耐震性は、家がどのような形をしているか、どのような工法で建てられているのかという建物自体の耐震性の他、地盤の強度によっても変わってきます。
地震に強い家の形は、正方形や長方形
家の形は、上から見たときに正方形や長方形などになっているような、シンプルな形の家が強いと言われています。その理由は、家を囲んでいる6つの面全てが一体になり、地震の揺れに耐えようと踏ん張ることができるからです。
その反面、2階が1階よりも飛び出しているなど壁面に凹凸が多かったり、L字型をしているような建物は、一点に揺れのエネルギーが集中するため、ゆがみやすくなります。
木造住宅、軽量鉄骨の違いと耐震性
家を建てる工法はいくつかありますが、それぞれに特徴やメリット・デメリットがあります。
木造住宅と鉄筋コンクリートを比較すると、材質の強度という面では鉄筋のほうが上ですが、日本の伝統的な木造住宅は、建物の柔軟性によって揺れを逃すという特徴もあり、どちらのほうが耐震性が高いということは一概に言えません。
木造住宅の耐震性
日本の風土にあった木造住宅は、多くの工務店で取り入れられている工法です。軽量鉄骨や鉄筋コンクリートの住宅よりは耐震性は劣りますが、耐震構造は進化しています。最新の耐震基準で建てられていたり、十分な耐震補強がされていれば、大きな地震の揺れに耐えられる木造住宅になります。
1981年に定められた新耐震基準と、地盤に合った基礎の強化や壁の配置、補強金物の使用などが義務付けられた2000年基準をクリアした木造住宅はかなり地震に強い家といえます。
これらの住宅は、震度7の揺れを2度観測した2016年の熊本地震でも被害は少なく済みました。
建築期間は35坪程度なら、3~5ヶ月。
木のぬくもりを感じる家づくりや、和風のデザインの家に向いています。
【メリット】
– 建築費用が安い (坪単価:40~70万円程度)
– 間取りの自由度が高いので、リフォームもしやすい
– 木材の調湿効果で結露やカビも抑えられる
– 木材がしなることで地震の揺れを吸収できる
【デメリット】
– 耐久性が低いので、定期的なメンテナンスが必要
– 耐火性が弱く、火災保険料が高い
– シロアリなどの害虫に弱い
軽量鉄骨(プレハブ)の耐震性
厚さ6mm未満の鋼材を使用する軽量鉄骨は、多くの住宅メーカーが取り入れている工法です。一般的に工場でパーツを生産し、現地で組み立てます。鉄骨の特性である粘り強さで、耐震性は木造住宅より強くなります。
建築期間は、35坪程度なら、3~5ヶ月にプラスして、工場での準備期間が必要になります。
デザイン的には、無機質でモダンな雰囲気の家作りに向いています。
【メリット】
– 生産システムが整った工場でパーツを準備するので、品質が安定している
– 建築費用が安い(坪単価:50~80万円程度)
– 火災保険が安い
【デメリット】
– 間取りの自由度が少なく、リフォームがしにくい
– 定期的なメンテナンスが必要な場合が多く、後々のコストがかさむ
– 長時間の火災に弱い
– 大きな揺れには、鉄骨がねじれてしまうことがある
2×4(ツーバイフォー)の耐震性
木造住宅のもう一つの工法が、2×4工法です。家を囲む天井・壁・床を面にして、箱のように組み立てていくのが特徴です。従来工法の木造住宅よりも壁が多いため耐震性が高く、暴風などの外部からの圧力にも強いといわれています。
建築期間は、一般的に4ヶ月程度ですが、1階から積み上げて造るので、途中で雨が降ってしまうと十分に乾かす必要があり、時間がかかってしまうことがあります。
デザイン的には、2×4は法律で定められた設計上の制約が多いので自由度は少なく、モダンなデザインの住宅を望むなら、従来の木造住宅(軸組工法)が向いています。
【メリット】
– 建築費用が安い(坪単価:50万円前後)
– 単純な工法なので、一定の品質が期待できる
– 高気密・高断熱で、空調管理が簡単なため、省エネに優れている
– 耐火性も高く、火災保険が安い
【デメリット】
– 間取りの自由度が少なく、将来的な変更も難しい
– 大きな窓など開口部を大きく取りにくい
– 結露が発生しやすい
こんな構造の家は耐震性にご注意を
建物の工法のほか、大きな吹き抜けやビルトインガレージなどの間取りや構造が耐震性に影響する場合もあります。
ビルトインガレージのある家、3階建ての木造住宅
住宅の1階部分に駐車場を作るビルトインガレージは、土地を効率良く使えることから、特に都市部で人気があります。
しかし、ビルトインガレージのある住宅では1階の道路側に壁がほとんどないため、耐震性が弱くなりやすい欠点があります。開口部を広くとることは、壁や柱で支える部分が減ってしまうので、家全体のバランスがくずれやすくなるのです。
ビルトインガレージを検討する際には、重量鉄骨工法を検討するか、一般的な住宅よりはコストがかかることになりますが、壁が少なくても強度が確保できる構造設計をするようにしましょう。
大きな吹き抜けのある家
玄関やリビングに吹き抜けがある家は、開放的で明るく人気がありますが、地震の揺れに備える柱と壁の量が少なくなるので、耐震性が弱くなってしまいます。
重量鉄骨や鉄筋コンクリートの住宅以外は、耐力壁を作ったり、耐震設計を考える必要があります。
吹き抜けを作ることは、冷暖房の光熱費が高くなったり、2階のスペースが減ってしまうなどの問題もあります。設計段階で耐震性や断熱性も含め、十分な打ち合わせが必要です。
増改築をした家
増築や改築で、家の形がL字やコ字になってしまうと、境界部分から壊れやすくなってしまいます。
また、平屋建てに2階を増築した場合も、地震の揺れに弱くなります。
これは、元々の住宅と新しく増築した部分の耐震強度が違うと、地震が起こったときにバランスを崩してしまうからです。
元々の住宅と増改築部分の構造を確認し、壁の量を増やしたり、梁や柱で補強するなど、地震にそなえましょう。
地盤の強さも家の強さに影響する
家の工法や構造に加えて、地盤の状態も耐震性に影響します。
地盤が柔らかい場所に建てられた家は、大きな地震が起こった時、建物の重さに地盤が耐えられないこともあります。調査の結果、地盤の表面の強度が十分でないと判断された場合は、硬い地盤があるところまでコンクリートや鉄筋の杭を打ち込むことで強化する方法が一般的です。
2000年以降の新築住宅の場合、土地の地盤調査が義務付けられるようになっていますが、それ以前の住宅ではほとんど情報がないことも多いため、耐震診断を受け、安全な状況なのか確かめるほうが良いと言えます。